基準測定施設とは
基準になる測定法とは、化学量論的に説明ができ、化学分析の合理性に基づいて組み立てられた方法です。これを国際的には、基準測定操作法(reference measurement procedure: RMP)といいます。
本JRMIでは、糖尿病の関連検査の標準化のために設定された検査項目についての基準測定操作法(RMP)を具体的に実施するために、当該の検査項目ごとに基準測定手順を設定しました。この基準測定手順に基づいて共同実験方式により、測定値の整合性の確認と維持を図るために設定した施設が基準測定施設です。
HbA1c基準測定施設に対する主たる目的は、HbA1c測定値に関するJDS - IFCC - NGSP間の各換算式の維持管理、認証標準物質の値付けと維持管理、認証標準物質へのJDS値の設定、サーベイや外部精度評価(EQA)/技能試験(PT)用試料における測定試料の目標値の設定などです。そのために実用基準測定施設I種 (working reference laboratory I : WRL-I)、体外診断検査薬製品にHbA1c値を伝達するための実用基準測定施設Ⅱ種 (WRL-II) 及び基準測定協力施設をそれぞれ設置して、基準測定施設ネットワークの組織の下、高水準の測定技術を維持します。
HbA1c基準測定施設と整合性試験
HbA1c基準測定施設
日本臨床化学会糖尿病関連指標専門委員会(JSCC/DMI)では、HbA1c 標準化システムの恒常的な維持を図るために、グリコヘモグロビン基準測定施設網に関する指針を設定しました(HbA1c測定のためのレファレンスラボラトリーおよび糖尿病関連指標標準化維持管理システムのための運用指針.臨床化学38:152-162, 2009.)。この指針を具体的に運用する主体として、一般社団法人臨床検査基準測定機構(JRMI)が活動し、HbA1cの基準測定施設の整合性試験、認定及び関連する測定上の諸問題について対応を図ることで現在に至っています
HbA1c基準測定施設ネットワーク構成はこちら
整合性試験
本HbA1c標準化維持管理システムは、実用基準測定施設(WRL)としてI種(WRL-I)およびII種(WRL-II)がそれぞれ設置されております
これらの実用基準測定施設におきましては、まずI種の基準測定施設(WRL-I)は、IFCC/HbA1cネットワークラボラトリーとして毎年実施されておりますIntercomparison Studyに参加し、DCMとしてのKO500法によりJDS値とIFCC値の関係の確認と維持を行っており、IFCC値の補完作業を担っております。また、同時に測定されておりますNGSP値との関係の確認と維持も併せて行っております。
また、II種の基準測定施設(WRL-II)は、HbA1c標準化維持管理システムにおきまして、I種の基準測定施設(WRL-I)と共に整合性試験を実施して、HbA1c標準化の維持管理を行っております。この整合性試験は、毎年2回(春と秋)に実施されております。測定試料は、IFCC Whole Blood Calibratorの8レベルおよびJPM RLs用試料の8レベルの計16種です。測定はKO500法によります。測定値は、JDS値とNGSP値の2種です。報告されます測定値につきまして、各測定試料についての測定生値と校正値および施設内基準測定性能としてのCV値と施設間基準測定性能としての偏差をそれぞれ解析しております。これらの解析結果に対しましては、判定基準が設けられており、各基準測定施設としての技術に対する適合性を評価しております。もし適合性に問題が生じた場合は、クロマトグラムによるチェックや、必要に応じて技術などに関しますコンサルテーションを通して適合性の確保に努めております。
さらに、II種の基準測定施設(WRL-II)におきましては、本整合性試験を通しまして、I種の基準測定施設(WRL-I)との互換性およびWRL-Iを通しましてIFCC/HbA1cネットワークラボラトリーでのIntercomparison Studyとの関係性などを確認することができるようになっております。
測定法および測定値の信頼性などに関する用語とその決まり
測定法および測定値の信頼性などに関する用語につきましては、下記ファイルをご参照ください。
測定法および測定値の信頼性などに関する用語とその決まり
参考:整合性試験における判定方法の例
本判定基準は、HbA1cピーク面積比(%)(以下 測定生データ)の施設内変動と施設間変動に98 %、95 %閾値を設けて精確さ維持の目標基準とし、施設代表値の偏差の分布が95 %以内にあることを基本としたものである。
- 施設内測定および施設間測定ともに、測定生データ基準および校正値基準で規程する。
- 測定生データおよび校正値の変動と誤差において、施設内および施設間基準を満たさない施設は認定値算定から除外する。
- 本判定基準を、一次実試料標準物質の値付基準として定め、認定値設定に適用する。
- 本判定基準を、JRMI性能維持基準とする。
判定方法:
- 測定性能の判定に、一次実試料標準物質の8レベルと測定試料8種について二重測定を2回行い、測定結果の測定生データと校正値及び施設代表値を用いる。
- 各施設測定の測定性能を、測定生データ・校正値及び施設代表値を整合性試験判定基準に照合し、判定する。
除外手順
- 施設内測定判定基準外施設を除外
- 施設間測定判定基準外施設を除外
I-施設内基準
I-(1) 測定生データの測定性能除外基準(6~13試料測定において)
個々の試料の変動係数(CV %) ≧1.6 %が1個以上( ≧2.2 % 一次実試料標準物質 Level 1)
個々の試料の変動係数(CV %) 1.6 %>CV≧1.4 %が2個以上( 2.2 %>CV≧2.0 % 一次実試料標準物質 Level 1)I-(2) 校正値測定性能除外基準(6~13試料測定において)
個々の試料の変動係数(CV %) ≧1.3 %が1個以上(≧1.9 % 一次実試料標準物質 Level 1)
個々の試料の変動係数(CV %) 1.3 %>CV≧0.9 %が2個以上( 1.9 %>CV≧1.5 % 一次実試料標準物質 Level 1)
救済設定範囲
一次実試料標準物質level-1に在っては範囲を0.6 %拡大する。
Ⅱ-施設間基準
Ⅱ-(1) 測定生データ測定性能除外基準(6~13試料測定において)
個々の試料における施設代表値の基準施設平均値との偏差(%)
≧5.6 %が1個以上
(一次実試料標準物質 Level 5)
≧6.6 %が1個以上
(一次実試料標準物質 Level 1)
個々の試料における施設代表値の基準施設平均値との偏差(%)
5.6 %>偏差≧4.4 %が2個以上
(一次実試料標準物質 level 5)
6.6 %>偏差≧5.4 %が2個以上
(一次実試料標準物質 level 1)Ⅱ-(2) 校正値測定性能除外基準(6~13試料測定において)
個々の試料における施設代表値の基準施設平均値との偏差(%)
≧2.5 %が1個以上
(一次実試料標準物質 Level 5)
≧3.5 %が1個以上
(一次実試料標準物質 Level 1)
個々の試料における施設代表値の基準施設平均値との偏差(%)
2.5 %>偏差≧1.7 %が2個以上
(一次実試料標準物質 Level 5)
3.5 %>偏差≧2.7 %が2個以上
(一次実試料標準物質 Level 1)
救済設定範囲
一次実試料標準物質Level-1とlevel-5の設定範囲に比例した各値の範囲を設定する。